古本LOGOS は、現在準備中です。

2021/06/15 09:28

お店の名前は「古本LOGOS」。ほとんど認知度のない、奥能登で古本屋をやっています。

これでも開業10年のちょっと手前。最初のきっかけは「一箱古本市」。そのころは別の仕事をしていて
週末のイベントとして、意地になって、自分の読み終わった本や、ブックオフでセドリした本をもって
金沢や周辺のイベントに出かけていた。売上があってもなくても楽しかった。

それがいつだったか、何かでポイントが切り替わってしまった。
臨時雇用の仕事の任期は1年限りで。子どもがちょっと病院に通っていて。義父が病気から他界して。
東日本大震災があった年の暮れの我が家は寒々しく、誰も来ない、肉と魚を食べない正月であった。
明けて2012年。その時一回ギアが入ってしまった。古書籍商の資格申請はすでにしていた。
昔の知人(出版社勤務)を頼って、都内のブックカフェや女子の古本屋巡りをした。
シェアで借りている物件の水回りに少しだけ手を入れて、飲食営業の許可を取った。
店名変更をしましょう、やるなら早いほうがいい、と何の準備もなく、真夏に始めた。

暑い夏、心地の良い秋、そして薪ストーブの冬。季節が一巡りする前の2月はいつも、私には転機だ。
ここでもう一度、冷静な判断が必要とされた。趣味でやるお店と、生活をかける商売は、違うと知った。
趣味でするにはまだ年が若すぎた(年金も退職金もないような生活、貯金は子どもの学費に)。
その時たまたま、歩いても通えるところに、持っている資格を生かせる仕事の募集が出た。
迷った。迷って迷った。そして博打に出た。採用されたら、その仕事、されなかったら古本屋。
結果は、採用されてしまった。子どもの通っている学校の、図書館司書(臨時→1年後に嘱託)。
本に囲まれて、あまり人の来ない司書室を私物化し、誰も来ないことをいいことに好きに過ごした。
仕事が楽しくなかった訳ではない、楽しいことも楽しくないこともあってそれはどんな仕事でもそうだ。
定年までそこに勤めて、それからまた(もしくは副業的に)始めたって良かった。
そして実際、私は「古本屋」を止めてはいなかった。古書組合に所属し、時々催事に出品し、
休みを利用してイベントに出て、ネットで自分の本を売った。

もう自分に嘘をつくのはやめよう。図書館司書が古本屋をやっています、と言えばどうしたって
「図書館の本を売っているんじゃないの?」という疑問が頭をもたげるであろう。
そんなことはしない、意地でもそんな恥ずかしいことはしない。
利用期間以上に本を借りたままにしたことはあるし、廃棄した本でどうしても処分したくない本を
自分のためにもらってしまったことは、ある。でもそういうのは売らない。本は読まれるためにある。
もしくは次世代に何かを伝える「種」のようなものだ。しばらく眠っていてもらうのに
本の中に書かれた文字は最適なseedsなのかもしれない。

新型コロナウイルスが騒ぎ始めた2020年3月末をもって、学校司書は辞めた。コロナでイライラする学校に
これ以上いたくなかった。どうせ図書室はまた別の目的のために使われることになるだろう、手を洗え、
換気しろ、人と離れて、更衣室になったり、こっそりスマホを見るための場所になる図書館を見たくなかった。

こうしてようやく念願の「古本屋」を名乗ることのができるようになった。
時代は「ネット通販」の波が来て、でも私は偏屈だからLINEもメルカリもAmazonも利用しないので
あんまりネット強者ではなくてどっちかといえばデジタル弱者(スマホ弱者、というべきか)で
でもお店もなんだか行きにくくて、隣近所で若い移住者(過疎なんで、地域移住が推奨されています)さん
たちがいろいろ始めているので、「隠れ家」として使いにくくなって、最近は自宅と催事出品で
仕事をさせてもらっている。「地域活性化」にも「人的交流」にもあんまり興味はない。
私は本が売りたくて読みたくて、それもどっちかといえば硬めの人文書だったりするから
近隣ではそんなに(古本屋は)ニーズはない、求められているのはブックカフェだったり、私設図書室のような
場所なのだろう。きっとそういうのは、私より若い人たちがしてくれるだろうから、
私は古風な「古本屋」を堂々と名乗って、堂々とちょっと固めの本を売ったり読んだりすればいいのだ。
伏流していた何年かで、いろいろ学ばせていただき、やはり大事なのは信用と継続で、
石の上にも十年くらいは必要な時間なんだな、というのがわかってきた。

今(2021年6月)は、香林坊東急スクエア地下の「うつのみや」書店さんでの催事(~27日まで)に
出品しています。思ったよりは人が来てくださっているようで、いろんなお店(7,8店)出品しているので
ぜひ近くの方はお立ち寄り下さい。掘り出し物があるかも! です。長くてごめんなさい。